2026年7月3日金曜日

●金曜日の川柳〔蟹口和枝〕まつりぺきん



まつりぺきん





かたちから入るタイプのぐりとぐら  蟹口和枝

『ぐりとぐら』は、双子の野ねずみを主人公にした有名な絵本のタイトルで、5音ということもあり、川柳でもよく使われます。
世代を超えてインストールされている言葉、と言っていいかもしれません。「ぐりとぐら」という響きそのものに、どこか懐かしく親しい感覚を覚えます。
そしてこの句は、その既知のリズムを巧みに利用しています。

まず、「かたちから入る」という上五は、「a」と「i」という明るく開かれた母音のみによって構成され、中七がさらに「aiu」の反復を添えることで、軽やかな律動を生み出しています。
一方、「ぐりとぐら」は母音だけを見れば決して単純ではありません。しかし、その不均質さは、むしろ共有された記憶の力によって自然に受容され、違和感を生じさせません。

「かたちから入るタイプ」という表現には、少し揶揄するようなニュアンスがあります。それを、あの純粋で愛らしい『ぐりとぐら』に重ねてしまうところに、この句のユーモアがあります。
少し皮肉でありながら、どこか優しい――そんな川柳らしい味わいを感じます。

「中途半端な」(『川柳EXPO2025―柳―』2025)より