大本義幸句集『硝子器に春の影みち』を読む〔 3 〕
野口 裕
不眠都市半導体のなかの大雷雨
第三章「薄(うすらい)氷」から。このあたりになると、私も出入りしている「北の句会」で見かけた句があちらこちらに出てくる。私は、句会での作者当ては下手で、この句を最初に見かけたときには、全く別の人を想像していた。都市の不眠を支える半導体。その中を流れる雷雨とは、電子の濁流か。電子の流れを「電流」というように、電気に関する現象を水の流れに比喩的にたとえることは、非常に相性がよい。この場合も成功しているだろう。なにやら、「ブレードランナー」の一場面でも想像したくなる。作者は以前に、「不眠都市、血管は錆びたまま佇っていたか」という句を書いている。第三章の最初の方に出てくるが、それよりも深まりを見せている句と言えるだろう。
(つづく)
〔参照〕 高山れおな 少年はいつもそう 大本義幸句集『硝子器に春の影みち』を読む ―俳句空間―豈weekly 第11号
〔Amazon〕 『硝子器に春の影みち』
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