シネマのへそ03
デッドマン (ジム・ジャームッシュ監督1995年)
村田 篠
ジム・ジャームッシュの映像と、ジョニー・デップの芝居と、できあがった映像を見ながら即興でつけたというニール・ヤングの音楽が、奇蹟のように融合した映画。
19世紀末のアメリカ西部を舞台にした、モノクロの「西部劇」なのであるが、これがなんとも、アメリカの原像のような、はたまた幻像のような、叙事詩的味わいを持っている。
登場人物がなにかおかしなことをしているわけでもないのに笑ってしまうのは、ジャームッシュの映画がOFF-BEATだからだ。
出会った相手がどこのどいつかわからない。過去がない。あってもウソくさい。目的もない。突然思いつく。その場で次の行き先を決める。決めないこともある……。
しかし、ジョニー・デップ扮するウイリアム・ブレイクは、会計士をしているありきたりの男だ。それが突然、OFF-BEATの波に放り込まれる。するとどうなるのか。なんと、詩人になるのである。そして、殺人者にも。
そういう意味では、ウイリアム・ブレイクという役名は、あまりにも象徴的だ。
ジョニー・デップは、「途方に暮れる」姿が似合う。受けの演技ができる。流されるままになることができる。そして、人が詩人になったり殺人者になったりする瞬間の表情を持っている……それも、途方に暮れたままで。
ブレイクを助け、いっしょに旅をするインディアンが、ブレイクの顔から眼鏡を外しながら言った台詞が印象的だ。
「眼鏡がないほうが、よく見える」。
そうかもしれない、とは、私にはまだ言えない。
ストーリー放置度 ★★★★★
ジョニー・デップ純度 ★★★★★
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蔦屋で借りてきて、さっき見終わりました。
返信削除おもしろかった!
ジム・ジャームッシュは好み(この映画は未見)ですが、ひさしぶり。暗転のタイミングが懐かしかったです。
音楽のニール・ヤングも、ときどき鳴らしすぎ、を除けば最高。
ともかく、いいものを観る機会をいただいて感謝です。