ローザ・ルクセンブルグ
ROSA LUXEMBURG
松本てふこ
11月の終わりに京都に行って、だらだらと鴨川沿いを歩いていた。
川沿いには、いわゆる路上生活者の根城がずらりと並んでいて、
ビニールシートを貼ったドアに吊るし柿が下がっていたり、
手作りらしきクリスマスリースやらが飾ってあったりする。
犬を飼っている人もいるようだ。
一緒に歩いていたひとが、対岸を見やってあっと声をあげた。
大きな柱時計ふたつ、衣装ラックには鮮やかな色の服が数着、
聞こえてくるAMラジオのDJの声、簡素だけど丈夫そうなミニテーブル。
橋の下にちょっとした出店のように広げられた、
一人の男が暮らす生活空間がそこにあった。
主らしき初老の男は、整然としたその空間の中心で微動だにせず坐っていて、
とても満ち足りているように見えた。
京都出身のバンドであるローザ・ルクセンブルグの「橋の下」を聴くと、
そんな光景を思い出す。
路上生活者らしき、「長い髪軽くまとめて顔をよく見りゃいい男」と
橋の下に花の種を植えるエピソードを素朴に歌い、
「お花が咲けば元気になるね/明日も来るよ橋の下」と
ほのぼのとまとまりそうなところに
「なんにもないけど橋の下」というリフレインによって
怒濤のように各パートが暴れだして終わる一曲だ。
フォーキーかつ情感たっぷりの演奏とボーカル・どんとの伸びやかな高音が
この曲の全体を実に美しいものにしているのだが、
「長い髪~」という表現に見られるさりげなくも鋭い観察眼やら
植えているのが実は芥子の種やらでとにかく何だか一筋縄じゃいかない。
より分かりやすく一筋縄ではいかない歌を紹介すると、
思春期の同性愛を生々しく痛々しく描いた、その名も「おしり」という歌がある
(ホントに歌詞がスゴいので食事中は聴かない方がいいです、
いい歌ですが食事は確実にまずくなるので…)。
歌詞に登場する少年たちは周囲との軋轢に耐えかねて別れを選択するが、
後年登場したユニコーンが日常の中でしたたかに愛を育み老いていく少年たちを
「人生は上々だ」で歌っていたことを思うと、
両バンドのその後の歩みを象徴しているようで何とも言えぬ気持ちになる。
1983年の結成から解散までたった4年、フルアルバムは2枚、
どんと(編註*)の早すぎる死など、シーンを疾走した感のある彼らだが、
今聴いても音は本当にやんちゃだ。
最後に。私はこのバンドを聴いて初めて、ギターのかっこ良さを知った。
歌詞のハチャメチャ度 ★★★★☆
ギター大活躍度 ★★★★★
(編註*)どんと:1983年、ローザ・ルクセンブルグ結成。同解散の1987年、ボ・ガンボスを結成。≫参考サイト
〔おすすめアルバム〕 ポンパラス~The Best of ROSA LUXEMBURG~
デビュー前にコンテストに出場した時の映像です。
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