2009年1月18日日曜日

●中嶋憲武 毛皮夫人50句


haiku workshop

毛 皮 夫 人 50句


中嶋憲武






ルルーシュの映画のやうな毛皮夫人

毛皮夫人アヌーク・エーメ意識して

毛皮夫人なかいたばしで降りにけり

ほほほほと口に手を当て毛皮夫人

土曜日の夜ものすごき毛皮夫人


毛皮夫人中学生の子がふたり

酔うて寝て死んだふりする毛皮夫人

毛皮夫人パール商店街にをり

毛皮夫人夫はどこかへ赴任中

毛皮夫人マルチェロ・マストロヤンニ好き


なにか物言ひたげ毛皮夫人の指

毛皮夫人毛皮をすこし毟らるる

毛皮夫人子のそろばんを掻き鳴らす

チンチラが毛皮夫人の懐に

毛皮夫人むかしJJガールとか


フランシス・レイの曲かけ毛皮夫人

毛皮夫人エマニエル夫人ともちがふ

亜麻色の髪をかき上げ毛皮夫人

毛皮夫人気がつけば鼻いぢつてゐる

魔法使ひサリーを語る毛皮夫人


毛皮夫人パートのレジを打ちにけり

毛皮夫人シュビドゥビダバと口ずさみ

お天気を気にして毛皮夫人の祈り

毛皮夫人動物図鑑小脇にす

毛皮夫人宝塚ガール風にポーズ


子の問に毛皮夫人の頬真つ赤

清く正しき毛皮夫人の素行かな

毛皮夫人朝のバナナを愛でてをり

訳ありの人ねと毛皮夫人の背へ

哲学的思考の果の毛皮夫人


毛皮夫人父は白系ロシア人

毛皮夫人育ちは伊予の国なりけり

次の曲弾いてと毛皮夫人の目

毛皮夫人とかぐろきコーヒーの夜明け

毛皮夫人マジックタイムの空が好き


SEIYUの袋提げをり毛皮夫人

分度器の恋の角度よ毛皮夫人

毛皮夫人不覚にも手を突っ込まれ

毛皮夫人アラン・ドロンの映画観て

停車場の毛皮夫人の訛りかな


毛皮夫人表六玉を連れてをり

毛皮夫人駅の別離をくりかへす

目つむりて煙草くゆらす毛皮夫人

毛皮夫人お蝶夫人を今もなほ

「こむら返りですわ」と毛皮夫人言ひ


コーチなど気にせぬ素振り毛皮夫人

ラケットが顔面直撃毛皮夫人

毛皮夫人テニスコートを振り向かず

太腿の筋肉痛の毛皮夫人

オカリナを吹きをり夜の毛皮夫人


6 件のコメント:

  1. 「毛皮婦人」だけで50句も作ってしまうなんて、驚きです。私の力では鑑賞できる自信がありませんが、中でも好きな句をふたつだけ挙げてみます。

    毛皮夫人子のそろばんを掻き鳴らす

    「毛皮婦人」のゴージャス感と古風な「そろばん」の対比が面白いです。

    毛皮婦人動物図鑑小脇にす

    「毛皮婦人」が「動物図鑑」だなんて、ちょっと笑えます。

    憲武さんの爆発的エネルギーを感じました。

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  2. お蝶夫人登場で数句迷走もオカリナでみごとに着地。
    おみごと!

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  3. もみさん、tenkiさん、お言葉、ありがとうございます。これを励みに精進します。

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  4.  キャラ俳ですね。季語の代わりにキャラクターを機能させている俳句。(「毛皮」が季語だという人がいれば、その人の語感はどうかしている。毛皮と毛皮婦人は、同義ではありませんから)
     この分野では、夏石番矢の「空飛ぶ法王」がすでに先鞭を付けていると思いますが、漫画と俳句、小説と俳句の融合を図る新しい俳句として、キャラクター俳句が、21世紀の俳句を先導するのではないか、と小生、胸を弾ませました。
     中嶋憲武様、季語を使って一人称小説の断片のような私小説俳句ばかりを年寄りが垂れ流している時代に、三人称小説のような俳句がなぜこれまであまり詠まれていないのか、そう思いました。
    小生、中嶋様作三人称小説の主人公の「毛皮夫人」のさらなるご活躍を願って止みません。毛皮婦人が、毛皮のビーナスに変身しなかったあたりは、新しいことを試みるうえで守るべき節度であるとは思いますが、毛皮夫人が出没すべき時空は、まだまだありそうで、続編が楽しみにさせていただいております。

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  5. 獅子鮟鱇さま、お言葉ありがとうございます。
    励みになります。
    夏石番矢氏の「空飛ぶ法王」は当然、頭にありまして、女性版をやってみたかったのです。そんな折、ウラハイ編集部より、お話がありまして飛びついた訳です。「毛皮夫人」というキャラクターは私の創作ではなく、能村登四郎氏の「毛皮夫人にその子の教師として会へり」という句から、頂いてしまいました。なんといいますか、この無理やりというか、切羽詰まった言葉の凝縮力に衝撃を受けました。毛皮夫人は今回これで、封印いたしますが、愛着のあるキャラクターでもあり、これから毛皮夫人にロンドン、パリなどへ付いて行って、新たな霊感を得ましたら、再度復活してみたいと、かように考えております。

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  6. >「毛皮」が季語だという人がいれば、その人の語感はどうかしている。

    毛皮も毛皮夫人も季語ですね。

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