かしつぼ
LA FEMME CHINOISE/中国女(1978)
中嶋憲武
かしつぼ=歌詞のツボ
詞/クリス・モスデル曲/イエロー・マジック・オーケストラ
Des notes sans fin Des visages identiques
C'est un bras brilliant De petits pieds laces
Des notes sans fin Des visages identiques
La demarche saccadee Avec des voix pincees
La discretion noiraude Arriere-pencees,qui sait
C'est un bras brilliant De petits pieds laces
Des notes sans fin Des visages identiques
La dimarche saccadee Avec des voix pincees
Fu Manchu and Susie Que
And the girls of the floating world
junk sails on a yellow sea
For Susie Wong and Shanghai dolls
Susie can soothe Away all your blues
She's the mistress The scent of the orient
Notes sans fin visages identique
Comme tous les vieux insectes
Demarche saccadee, affiche criarde,voix pincees
Discretion noiraude bible rouge
Arriere-pencees, que sait Un monde finit
なんとも取り留めのない詞である。図らずも歌詞のなかに Des note sans fin とあるように、取り留めの無さというのは、この曲のキーワードだったのかもしれない。
クリス・モスデルの詞は、いつでもこんな調子でイメージの断片を連鎖させてひとつの世界を形作る。
フランス語の歌詞の部分は、当時アルファ・レコードの社長秘書だった布井智子が担当している。曲を聴いている限りはきれいなフランス語で、とても日本人だとは思えない。布井智子はきっときれいなひとに違いない。
歌詞はたとえば、こんな内容。
取り留めのないメモ 同じ顔
それは輝く腕 紐で結ばれた小さな足
取り留めのないメモ 同じ顔
ぎくしゃくした歩き方 気取った声をして
黒髪の慎み深さ 心の底の考えなど、誰に分かる?
それは輝く腕 紐で結ばれた小さな足
取り留めのないメモ 同じ顔
ぎくしゃくした歩き方 気取った声をして
フー・マンチュー博士とスージー・キュー
漂う世界の女の子たち
黄海に浮かぶジャンク
スージー・ウォンと上海ドールズのために
スージーは慰めてくれる
あなたの憂鬱をすべて吹き飛ばし
彼女こそ女王様だ
東洋の香りして
取り留めのないメモ 同じ顔
古い昆虫すべてのように
ぎくしゃくした歩き方 けばけばしい貼り紙 気取った声
黒髪の慎み深さ 赤い本
心の底の考えなど、誰に分かる? ひとつの世界が終る
旺文社のプチ・ロワイヤル仏和辞典を引き引き書いたので、多少間違ってるかもしれないが、だいたいこんな感じの歌詞かと。この曲は、「イエロー・マジック(東風)」という曲からノン・ストップで繋がっていて、2曲で1曲という見方もできる。この2曲と「マッド・ピエロ」という曲でゴダール3部作と呼ばれていたようだが、歌詞の内容はゴダールの映画とは全く関係ない。ただ、上記の「中国女」の英語の詞の部分は「スージー・ウォンの世界」という映画(未見ですが)と多少関係があるようだ。
大学時代、映画研究部にいた。8ミリ映画を撮っていたのだ。1年のとき無理矢理先輩の映画を手伝わされた。それは、「東風」と「中国女」の今で言うPVのような作品だった。「チャーリーズ・エンジェル」をもじって「チャイニーズ・エンジェル」というタイトルのSF風のもの。
この作品は15分そこそこのものだが、撮影から完成まで5年くらいかかったと記憶する。なにしろ短いカット割りが好きなひとで、主演女優の弁によると上映会のときに、たしかに撮られたと思ったカットがあったと思ったが、そのカットが無かったので、観終わってから監督に聞くと、まばたきをしているうちに、そのカットが終ってしまっていたというから、たった2コマか3コマのカットだったのかもしれない。短すぎるよ。5コマくらいかな。8ミリフィルムは18コマで1秒だから、零点何秒かというカットだったのだ。
結構凝る監督で、美術であるぼくに、冬に桜の花がいっぱいに付いた枝を作って来いとか言って、ぼくは言われた通りに夜中に古利根川の土手の桜の枝を折ってきて、花は桃色の紙で一枚一枚作って枝に貼付け、徹夜して作ったその枝を、満員の東武線、満員の千代田線を乗り継ぎ苦心惨憺して、狛江の野川の現場へ持って行くと、「よく出来てるじゃん」とひと言。そんな風に苦労して凝りに凝って作られたカットがたったの3コマだか5コマだかしか使われず、目に突っかえ棒をして映画を観ていなけりゃならないなんて、涙も涸れるというものよ。
この曲のヴォーカルはユキヒロで、細野さんが名付けた「フー・マンチュー唱法」という歌い方をしている。この歌い方はキモい。今だにやってるけど。
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