サマーランドまで 後篇
中嶋憲武
滝山街道を越えて歩いていると、サマーランドは向こう岸だ。行く手に橋らしきものは見えない。仕方がないので、堰のテトラポッドを伝って行こうかと話す。
河原まで降りて、テトラポッドの配置を見ていると、なんなく渡れそうな気もする。でもテトラポッドの丸っこい三角錐の離れ具合が、微妙な距離で、小さなテトラポッドの上に立つと、バランスも悪く、次のテトラポッドへ渡るには、勢いをつけて義経の八艘飛びのような芸当でもしない限り、渡れないということが判明した。
堰の放水路は3つあって、2メートルくらいずつ離れている。堰を渡るにしても、放水路のところを立ち幅跳びの要領で飛んでも、次の放水路の仕切りの幅が狭く、前へつんのめって川に落ちるということも充分考えられる。正面の山に日が沈んだ。
川を渡るのは諦めて滝山街道まで戻り、橋を渡った。はじめからこうすれば良かったのだ。橋を渡ると、道に山が迫っていて、急に空気がひんやりとして来た。深山のあの独特の香りもする。橋を渡っただけでこうも空気が変るものか。
だらだら坂を登り、サマーランドに着くと、営業時間は終っていた。サマーランド経由のバスを待つことにし、ベンチに座る。日が暮れてしまって、あたりは薄暗くなりはじめていたので、山の冷気も手伝ってすこし心細い。山の冷気は土の冷たさなのだろうか。
最終便のバスに、友人とぼく、女の子の二人連れが乗った。バスは低い山の暗闇のなかを走った。途中から乗ってきた少年が、途中の停留所で降りた。こんなところに民家があるのだろうかというような場所である。少年はぬらりひょんとかべとべとさんだったのかもしれない。
うとうとして目が覚めると、八王子の市街地を走っているようである。駅が見えてきた。
バスを降り、どこで何を食べようか迷った挙句、一番最初に目に付いていたとんかつ屋に入った。とんかつは肉がやや堅かったけれど、まあまあで、量も申し分のないものだった。それに安い。ロース定食700円でございます。
ぼくはロース定食、友人はミックス定食を食べた。
とんかつ屋を出ると、コーヒーが飲みたくなり、スターバックスへ入った。向かいの「そごう」の赤い電器の文字が消えるまでいて、京王八王子駅から京王線に乗った。耳の中ではまだ鷽の鳴き声がしていた。
(了)
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20キロ近くありますね。鷹の台からサマーランドまで。
返信削除googleによる。
お疲れさまでした。