2009年8月6日木曜日
●おんつぼ20 ラウル・ミドン 山田露結
おんつぼ20
ラウル・ミドン Raul Midon
山田露結
ラウル・ミドン。
盲目のシンガー/ギタリストである。
盲目のミュージシャンというと、咄嗟に思い浮かぶのはレイ・チャールズ、スティーヴィー・ワンダーあたりか。
いずれも黒人である。
たとえば、「ブラインド・レモン・ジェファスン」、「ブラインド・ブレイク」、「ブラインド・ボーイ・フラー」、「ブラインド・ウイリー・マクテル」などなど、盲目のシンガー/ギタリストというのは黒人ブルース・プレイヤーにはかなり多い。
これは盲目ということ、黒人ということとアメリカの社会状況と何か関係があるのかどうか、私は知らない。
近頃、日本でも盲目の天才少年ピアニストが話題になったが、ミュージシャンが盲目であることと、演奏されるその音楽の良し悪しとは直接関係がないようにも思われる。
しかし、聴く側は演奏家が盲目であると知った瞬間から何やらその演奏に神秘性を感じたりしてしまったりする。
つまり、視覚を閉ざされることによって通常では考えられないような特別な能力が生れるのではないかという憶測やいわゆる「盲目とは思えない」という類の先入観が聴く側にある一定のイメージを刷り込んでしまうのである。
そのような憶測や先入観が演奏家にとってプラスなのかマイナスなのかは分からないが、そういったイメージが盲目のミュージシャンに付きまとってしまうのはある程度、仕方のないことだろう。
さて、ラウル・ミドンである。
彼の演奏する音楽はいわゆるR&Bのカテゴリーに入るだろうか。
私は彼の音楽を最初にいつどこで聴いたのか、はっきりとは覚えていない。
ただ、「ステイト・オブ・マインド」という彼の代表曲を聴いたとき、全身に鳥肌がっ立ったことだけは覚えている。
そして、その時私は、彼が盲目であることは知らなかった。
パーカッシブでファンキーな彼のギタープレイはキザイア・ジョーンズあたりを彷彿とさせるが、なんと言っても最大の魅力はそのパワフルなボーカルである。
何と説明したらよいだろうか。
何か「歌」というものをはじめて得たときの人間のナマの声の原初的なエネルギーのようなもの(ちょっと大袈裟か?)、ああ、歌ってこういうものなんだということを思い知らされたような大きな衝撃が体中を走ったのである。
その後、しばらくして私は彼が盲目であることを知った。
目が見えないことと彼の音楽がすばらしいこととはやはり直接関係がないように思う。
思うが、どうしてもどこかで目の見えないことによって彼の中に宿った神秘的な能力、目が見えないからこそ得ることの出来る超自然的な能力の存在を思ってしまうのである。
ソウルフル度 ★★★★★
パワフル度 ★★★★★
おすすめアルバム
寡聞にしてこの歌手を知りませんでした。YouTubeを皆見ましたがデュエットからソロから全部素晴らしい。口真似のミュート・トランペットというかフリューゲルホーンのような音色の即興も実にジャージーで衝撃的。買い漁ります。いやあ、紹介してくれてありがとう。はまりました♪
返信削除猫髭さま
返信削除そう言っていただけて、私もうれしいです。
書いた甲斐がありました。
ありがとうございます。