2010年5月2日日曜日

●おんつぼ31 ダリダ 四ッ谷龍


おんつぼ31
ダリダ Dalida
「ひとりで生きないために」

四ッ谷 龍



おんつ ぼ=音楽のツボ



ダリダの歌声からは、女性の女らしさがジュワーッとにじみだしてくるように感じられる。iPodでダリダの曲を聴いていると、女らしさに包まれて自分の身も心もとろけるような気配がする。

ダリダ自身の人生は、悲しみに覆われたものだった。なにしろ、付き合った男性が3人も自殺してしまったのだ。カンツォーネ歌手のルイジ・テンコ、ラジオディレクターのリュシアン・モリス、そして自称伯爵のリシャール・シャンフレイ。

ダリダはエジプト生まれのイタリア人だが、フランスで成功し、出す曲出す曲、みんな大ヒットになった。生涯で55回、ベストヒットNo1を獲得したという。多くのファンに幸福と喜びを与えながら、最後はそんな生活にも疲れてしまい、彼女自身が睡眠薬で自殺した。大輪の花のような美貌と悲劇的な結末の対比はショッキングなものであった。

そのダリダの永遠の名作が、「ひとりで生きないために」である。

 ひとりで生きないために
 人は犬と暮らしたり
 薔薇とともに生きたり
 信仰とともに生活したりする
 ひとりで生きないために
 人は馬鹿騒ぎをしたり
 思い出とか、影とか、そのほか何でも
 大切にしたりする

最初は、このように、ごく普通に歌い出されるのだが、次の節に行くと「おや?」と思う。

 ひとりで生きないために
 女の子が女の子を愛したり
 男の子が男の子と
 結婚したりする
 ひとりで生きないために
 子どもをつくる人もいる
 ほかの子どもと同じくらい
 孤独な子どもを

ここに来て、歌詞のイロニーにわれわれは気づく。そして後半、さらに強烈な表現が待ち受けている。

 ひとりで生きないために
 友だちを作ったり
 つらい夜が来たら
 友だちを集めたりする
 お金や夢や
 豪邸のために生きたりする
 だが二人で入れる棺桶を
 作った者はいない
 ひとりで生きないために
 私はあなたと生きる
 あなたといると私は孤独だ
 私といるとあなたは孤独だ
 ひとりで生きないために
 私たちは生きる
 まるで 自分たちはひとりで生きていないという
 まぼろしを持とうとする人間たちのように

「ひとりで生きないために」というタイトルだが、結局この歌が言おうとしているのは、人はひとりで生きていくしかないものだという事実である。

孤独の癒され度 ★★★★
美貌に癒され度 ★★★★★




Vezi mai multe video din Muzica

おすすめCD

6 件のコメント:

  1. 実はダリダを初めて聴きました(ありがとうございます。勉強になりました。変な言い方ですいません)。修行の足りない我が身には一番の歌詞の次の部分が突き刺さりました。

    On vit pour le printemps
    Et quand le printemps meurt
    Pour le prochain printemps
    Pour ne pas vivre seul
    Je t'aime et je t'attends pour avoir l'illusion
    De ne pas vivre seule, de ne pas vivre seul
    人は春に生きる
    そして春の死ぬとき
    次の春のために
    ひとりで生きないために
    私はあなたを愛し幻を抱えるためにあなたを待つ
    ひとりで生きないために、ひとりで生きないために

    返信削除
  2. 四ッ谷 龍2010/05/03 21:40

    ダリダって何でも歌ってしまう人で、スティービー・ワンダーやワム!のカバーのほか、変わったところでは「ワールドカップフランス応援歌」「史上最大の作戦のテーマ」なんていうのもあります。
    その中でおすすめは、「Une Vie」(いのち)。ミッシェル・ルグランの曲で、彼女の明るく柔らかい面を聴くことができます。
    http://www.youtube.com/watch?v=mYTyni63H2Q
    葉月さん、ありがとうございました。

    返信削除
  3. 横レスですが、Une Vie素晴らしいです。明るい曲もミシェル・ルグランンらしくて・・・

    返信削除
  4. 四ッ谷さん、mikioさん、情報ありがとうございました。おかげさまで昨日からyoutubeつなぎっぱなしです(困ったものだ)。

    返信削除
  5. すっかり忘れていたダリだの歌を「裏週俳」で聴けるとは。。ああ!懐かし嬉し♪感謝♪

    返信削除
  6. 四ッ谷 龍2010/05/05 10:00

    youtubeを聴きはじめたら、ミシェル・ポルナレフが歌うリュシアン・モリス追悼歌「誰がおばあちゃんを殺したの」(Qui a tue Grand Maman ?)とか、ルイジ・テンコの死の原因になった「チャオ・アモーレ・チャオ」とか、パティ・プラヴォによるダリダのカバー曲とか、押さえておくべきビデオがたくさんありますよ~~。
    葉月さん、もう寝ている暇なんかありませんねー。(笑)

    返信削除