中嶋憲武
垂れてゐる紐ひつぱれば虫の闇 さいばら天気
雨がやんだ。出かけようかと思う。どこへというアテはないのだけど。夜が来ると、出かけたくなる。チブル星人と目が合う。蛍光灯の紐に、不二家のケーキのリボンをつなげて、把っ手として百円のガチャガチャで出てきたチブル星人をくっつけている。寝転がっていても、電気を点けたり消したりできるという寸法だ。生活様式がこんな有様です。お母さん。今じゃ心身ともに立派な沼ガールです。
出かけるのはやめて、鰯の甘辛煮でも作ろうかとも思う。メールをチェックしてみる。気になっている彼からの返信はない。ああ、こんな事に一喜十憂する日々。脱却したい。脱却しよう。すこし肌寒い季節になってきて気持ちが変化しているのかもしれない。あれこれと迷う事が多くなった。やっぱり街に出よう。脱却するのだ。よれよれのカーディガンを引っかけ、天井から長く垂れているリボンをぱちんぱちんと引っ張った。うす暗がりの足下でチブル星人が揺れていた。
掲句は「はがきハイク」第2号(2010年10月)掲載
●
沼ガール≫http://www.kanshin.com/keyword/1954635
返信削除チブル星人≫google
コメント欄で、註。
とりあげていただき感謝であります。
いえいえ。
返信削除勝手なことばかり書かせていただいて。