12月8日〔3〕
中嶋憲武
「樹の花」へ行く。
そのまえに何か食べようと思って、煉瓦亭のポークビーンズ載せハンバーグが食いたくなり、八丁堀で降り新富町の「煉瓦亭」を目指したところ、店のあったところは花屋になってしまっていた。がっかりして、宝町の「煉瓦亭」を目指したところ、「さとう」とかいう変なメンチカツ屋になってしまっていて、店の前で店員が呼び込みをやっていたので聞いてみると、「うちが煉瓦亭さんを買わせていただきました。昭和通りを一本入ったところで営業してると思いますが、どこだかわかりません」などとぬかす。木枯のなかにその店員を置き去りにして、煉瓦亭を探しに行く。無い。分からない。とぼとぼとだいぶ歩き回ったので、非常にハングリータイガーになってしまった。
気がついてみると木挽町の交差点に立っていたので、市川海老蔵さんもよく行く「ナイルレストラン」に決める。ナイルレストランといえばナイルロジャースがもとシックのひとだと分かったのは、マドンナがデビューしたときにそのプロデュースを担当していたからだった。と、今日「小島慶子キラ☆キラ」を聞いていたときに西寺豪太さんがシック特集をやっていたので、ふと思ったことだった。シックの4枚組のボックスセットが出るらしい。ちょっと心が動く。シックといえば、大学に入学して最初に口を効いた女の子が、シックをよく聴くと言ったので、ぼくは「おしゃれフリーク」と「グッドタイムズ」くらいしか聴いたことがなかったので、その夜A&Iでレコードを借りて勉強したなんてことを思い出す。故ルーサー・ヴァンドロスもヴォーカルで参加してたことがあったらしいよね。
で、なんのはなしだったっけ?ああ、ナイルレストランね。ムルギランチ食ってそそくさと出る。また大通りを渡って、歌舞伎座の裏の「樹の花」へ。ここはジョンとヨーコがひっそりとお茶を飲んだ店だ。そのいきさつは、枝川公一の本に詳しい。
この店では毎年12月8日になると一日中ジョンの曲をかけている。何年か前、ある女の子と行ったときなどはジョンとヨーコの坐った席に座って、ジョンとヨーコの吸い殻(灰皿にラップがかけてあり大切に保管してあった)を見せてもらった。去年は来れなかった。おととしは山本勝之氏が物故して、そのショックが拭いきれないまま樹の花に来た。ジョンと勝之氏とジョンと勝之氏とぐるぐると交差して、カウンターで涙ぐんじゃったりしたのだった。
コロンビアコーヒーとアーモンドクッキーのレノンセットというメニューがあるのだが(このことはいつかの「豆の木」のアンソロジーのエッセイに書いた) 、今日はなんだか声に出して「レノンセット」と頼むのが気恥ずかしく、チョコレートケーキと樹の花ブレンドをオーダーした。BGMにずっとジョンの曲。
ジェラス・ガイ
パワー・トゥ・ザ・ピープル(Live)
ヤー・ブルース(Live)
冷たい七面鳥
ラブ
マインドゲームズ
真夜中を突っ走れ
♯9ドリーム
スタンド・バイ・ミー
スターティング・オーヴァー
ウーマン
ビューティフル・ボーイ
ウォッチング・ザ・ホイールズ
などかかる。
あれから2年経ってしまったのだな、と思う。
帰ってきて「未完成第2番 ライフ・ウィズ・ザ・ライオンズ」「平和の祈りを込めて プラスティック・オノ・バンド」「ジョンの魂」聴く。
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