2011年1月5日水曜日

〔人名さん〕憂鬱な森

〔人名さん〕
憂鬱な森


鶴の家に匿れたままの岸田森  後藤貴子

岸田森(1939年10月17日 - 1982年12月28日)と聞いて、 テレビドラマ「傷だらけの天使」(1974年10月5日から1975年3月29日まで毎週土曜日22:00 - 22:55に日本テレビ系で放送)を思い出す人が多いかもしれません。主人公・木暮修(萩原健一)たちの雇い主・綾部貴子(岸田今日子)の部下・辰巳五郎役。「愛すべきキャラクター」というものがあるとしたら、岸田森演ずる辰巳五郎は、それとは遠く、「愛すべきところのない」人。スタイリッシュを気取りながら、生臭いところもあり、強い者に弱く、弱い者に強い。ところが、それでも、微塵だけ、薄皮一枚だけ、愛すべきところが残る。憎めない、というのでもない。いやなやつはいやなやつなのだが、100パーセントそうと言い切れない。残り1パーセントに、シンパシーを感じてしまう。きわめて微妙な役作りをみごとに成し遂げていたのが、岸田森でした。

岸田森は、岸田森以外にない。ビッグネームではないのに、異様な存在感です。

あるいはまた、私などは、映画「呪いの館 血を吸う眼」(1971年)のなんとも気味の悪い陰鬱なドラキュラ役の岸田森が妙に印象に残っていたりもします。

掲句は後藤貴子句集『飯蛸の眼球』(2010年)より。

(さいばら天気)

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