200号記念誌上句会・選句一覧(1)
お待たせいたしました。選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、5日間にわたって発表させていただきます。
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多数のご参加をいただき、ほんとうにありがとうございました。
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【万】
あたたかや糸ひつぱれば万国旗 天気
○真鍋修也○山田露結○金子敦○楚良○すずきみのる○米男○池田瑠那○めろ
■糸というか紐というのか。確かに引っ張って運動会の準備をした。運動会は秋の季語だが、僕らが子供の時には春の運動会もあった。他の行事ではなくて、春の「運動会」の景色と思いたい。(真鍋修也)
■可愛らしい、子供の手品のような万国旗。「あたたかや」の上五が万国旗をより微笑ましいものにしています。(山田露結)
■手品師の帽子から、ですね。省略の効いた句。(金子敦)
■何気なく引けば万国旗、平和な世界となりたいものです。(楚良)
■上質のユーモアを感じます。「紐」ではなく「糸」というのも繊細で良いなと思いました。ふと、宮崎アニメの一コマを思い出したりもしましたが……。(すずきみのる)
■万国旗の間抜けさが季語にマッチしている(米男)
■手品の一場面なのでしょう。春らしい、心の弾みが伝わります。(池田瑠那)
■暖かい日本でだらだらと引く先の万国旗が思わせぶりです(めろ)
うぐひすや万年床をせりだして どんぐり
○鈴木茂雄○中村 遥
■この「万年床」の主が健康な人かそうでないかによって、句意は若干異なる。つまり、前者なら文字通り無精の万年床ということになる。が、いずれにしても、作者が森羅万象の中から「うぐいす」という季語を斡旋し、なおかつその表記を平仮名で書き表すことによって、読者を明るい春の日差しのもとへと誘うことに成功している。いずれにしてもと言ったが、再読すると「せりだして」という描写に、後者の生に対する執着の逞しさが見えてくる。(鈴木茂雄)
■〈万年床〉がおもしろい。清と濁の対比のよろしさ。(中村 遥)
さえかえるお万の方のかくすメス 知人
○痾窮
■家康の側室(だろう)、人質なら懐剣、字数の関係でメスなのか?解らんけど、先ずは1票。(痾窮)
ジョン万次郎春風に鼻膨らませ 池田瑠那
○すずきみのる
■蕪村的な虚構の世界が楽しい。真実は細部に宿るというのか、細部の切り取り方が本当に巧みで上手いの一言です。(すずきみのる)
なだ万の皿の立派に蕗のたう 杉原祐之
パチンコの玉一万個花の雲 信治
○山崎百花○楚良
■買ったのではなく勝ったのでしょうね、季語が花の雲だから。きっと、うはうはですね。(山﨑百花)
■花の雲が良いですね。良い夢を見させて頂いております。(楚良)
バレンタインデー万力をゆるく締め 憲武
○廣島屋
■下五がよかったのでいただきました。微妙にバレ句の匂いもするのがいいですね。考えすぎでしょうか。(廣島屋)
ポッペン吹く岬に万の頭蓋骨 木野俊子
○埋図○知人○瀬戸正洋○山田露結○鈴木茂雄○野口裕○恵
■どの頭蓋骨も黙っている。だが、そこに爆音がするのである。誰かが云わせているのか。(埋図)
■この岬は元戦場なのでしょうか。海の音の合間を縫うように響くポッペンの音。おかしくてさみしい風景が目に浮かびました。(知人)
■ポッペンといえば長崎、原子爆弾。ポッペンの音色が万の頭蓋骨に繋がる作者の心の動きに興味を覚えた。「ある出来事」に対して人は自分自身で対応しようとする。それができない場合、外に救済を求める。俳人は俳句を作ることによって、救済を求めるのだ。(瀬戸正洋)
■ポッペンの先端の丸い形状が頭蓋骨を思わせるのでしょう。「岬に」の一語によって、この頭蓋骨が先の大戦で犠牲になった人たちのものだということを連想させます。悲しい一句です。(山田露結)
■「ポッペン」を吹くと海岸線にびっしりと組み込まれた白い消波ブロック(テトラポット)が「万の頭蓋骨」に見えてくる。そんなふうに「岬」から海を眺めていると、ポッペンの音色に呼応するかのように、波間に浮かぶ(浮かんだり沈んだりしているようにみえる)おびただしい数の頭蓋骨が寄せては返し、そのひとつづつから叫びにも似た声が反響としてこの透き通ったポッペンに返ってくる。ここはどこだろう。ここは何処だったんだろう。いったいここで何があったのか。上掲の一句から物語が始まる。すでに始まっている。(鈴木茂雄)
■間延びした音と、過去の惨事の対比が絶妙と感じました。(野口裕)
■ポッペンと岬に吹く風が、さながら鎮魂歌のようであります(恵)
雨に煙る八百万神春競馬 野口裕
花粉症対策万全いざ出勤 正則
岩山を削りし氷河幾万年 楚良
亀鳴くや万年床を畳めよと 中村 遥
○真鍋修也○たゞよし○正則○俊子
■僕も万年床だった。畳むがこの字というのも今知った。亀が鳴くことはない。万年床が畳まれることもない。その取り合わせが僕好みの晩春の情趣となった。(真鍋修也)
■亀が鳴くほどの風の無い暖かな春の陽気。時刻ならば10時か11時頃か。お日さまに笑われますよ、とささやく母親のような亀。(たゞよし)
■虚と実の組み合わせが面白い(正則)
■だんだん匂いがしてきたようです。窓全開させましょう。(俊子)
恨めしや万病抱ふ老いの春 真鍋修也
春ショール久保田万寿を二合ほど 田中槐
○風族○栗山心
■いい酒ですねえ。酔って春ショールに包まれている情景がいいです。(風族)
■艶っぽくて、素敵です。日本酒は全く飲めないので、こんな女性に憧れます。(栗山心)
春の山万歳三唱してゐたり 恵
○中村 遥○一雄○鴇田智哉
■お目出度い雰囲気と活気ある空気が伝わる。(中村 遥)
■たいした万歳三唱じゃなくて、滑稽な感じがします。(一雄)
■万歳の、能天気さがいい。意外な春の山。(鴇田智哉)
春愁の持ち重りせし万華鏡 栗山 心
春の宵万国旗など見せませう 廣島屋
○正則
■手品師のとぼけた感じに味がある表現で良い句になったように思う(正則)
春の星封じ込めたる万華鏡 すずきみのる
○義知○中塚健太○柳 七無
■煌く感じは冬の星の方が適当かと思うが、万華鏡の色とりどり感はやはり春の星。(義知)
■「春の星」だからこその高メルヘン度。(中塚健太)
■情景の頭に浮かぶ様が、とても綺麗でした。(七無)
春の風とは万国旗かもしれぬ 篠
○瀬戸正洋○太田うさぎ○田中槐
■春風の中に佇んでいたら、まざまざと万国旗のある風景が甦ってきた。僕ならば子供の頃に見たサーカスの万国旗。うら悲しさなど感ずることができず、明るい未来しか考えなかった不健全な精神の時代の話。(瀬戸正洋)
■春風が万国旗そのものという発想に惹かれます。明るさと期待感が広がっていく句。そういう点で「ジョン万次郎春風に鼻膨らませ」もとても好きでした。(太田うさぎ)
■春の風を「万国旗」という喩が的確に表現している。ただの幸福感でないところがよいと。(田中槐)
春は曙お万の方の不妊症 風族
○沖らくだ
■大奥には諸々思惑もあることでしょう、おお怖、というような話も、「春は曙」でちょっと漫画チックに感じられる。(沖らくだ)
春愁の踊つてゐたる万華鏡 金子敦
○たゞよし○佐間央太
■春愁は女のものとな。丁寧に千代紙が丸く張り巡らされている万華鏡には、過去と今とが鏡を通じて違った形の愁いを織り成す。(たゞよし)
■赤い靴になったり青い靴になったり(佐間央太)
春愁や万年暦に焉(をは)りなく るかるか
○柳 七無
■終わり無い時の流れ感じる憂い、とても共感しました。(七無)
春立つや万に一つの違ひなく たゞよし
○真鍋修也
■当然のことである。その当然が狂って来ている。今のうちに四季という日本の大自然の素晴らしさを満喫しておこう。(真鍋修也)
八百万の神々笑ひさざめき春 苑を
○学
■見方が面白い。(学)
保険屋が万一売りに来て四月 痾窮
○埋図○知人○山﨑百花○廣島屋○鈴木茂雄○千代
■春になり、入学式も終われば、新入社員の方が蠢き始める。死亡確率表を生命表と言い換えて、生命保険を売りに来る。当人を前にして、懸賞に当たる如く云う。(埋図)
■新年度はさまざまな勧誘業者にとって書き入れ時。ただやってこられる側にしてみれば、面倒な存在―そこがよく伝わってきました。(知人)
■四月。新入社員への勧誘で、保険屋さんは稼ぎどき。四月一日の四月馬鹿も絡んできそうです。(山﨑百花)
■大喜利で座布団がもらえそうな句。感心しすぎてギリギリまでとるかどうか悩んだのでした。(廣島屋)
■この「四月」というコトバには「四月は残酷極まる月だ」というT・S・エリオットの詩の一行が内在している。その四月には必ずやってくる。「万一」という不安を入れた黒い鞄を脇に抱え、笑みをさえ浮かべてやって来るのだ。「保険屋」という言葉の選択からすでに推し量ることができていようが、作者は保険会社の外交員という存在をつねづね苦々しく思っているのである。それは安心や保障という切実な問題を差し置いて「万一」を売り物にしているからだ。だが、けっして真面目にそう思っているのではないことは、この一句の軽快なリズムから察することができる。(鈴木茂雄)
■保険の人が売っているのは「万一」だったのか。四月ごろになるといろんな者が訪ねて来る気がする。保険屋もそのひとつか。(千代)
万(よろず)の目 貼り付き睨む 裏まぶた 柳 七無
万の蓮眠る関さん革命見る 佐間央太
万屋が焚き火のごとくなくなりぬ 鈴木茂雄
万力を締め上げてゆく春の月 山田露結
○鈴木茂雄
■「万力」と「春の月」とのあいだには何の因果関係もない。そう思うのは科学万能を信じるわれわれ現代人の悪弊ではないかと思うときがある。こういう作品を読んだときがそうだ。なるほど、いま昇っていく「春の月」が「万力を締め上げて」いる、締め上げるような作用を地球に及ぼしながら春の月が昇ってゆく。けっして錯覚ではない。それは月には何か不思議な力があると信じているところがわれわれの側にあるからだろう。ことに「春」にはそういう力が漲っている。(鈴木茂雄)
万屋の真ん中に立つ午祭 義知
万華鏡巡りて同じ黄沙降る 千代
万歳に腕は裸となりました 山田耕司
○鈴木茂雄○笠井亞子○藤幹子○牛後○篠
■「万歳」をしている光景をテレビか何かの映像で見て、作者は遠き日のことを思い出したのだ。意に反する「万歳」だったのだろう。「腕は裸となりました」に自嘲の心理的投影図がある。季語は「裸」だが、この句はそんなことを取り沙汰する範疇の埒外にある。和服の袖から丸裸になった腕が恥じ入るように俯いている。(鈴木茂雄)
■明るく、目出度くおかしく、そしてちょっぴりかなしい。(笠井亞子)
■講談調の泣かせるリズム、なのに「…そうですか」としか言えない内容、面白い。(藤幹子)
■バンザイをして見送った後の、めくれて露わになった腕に淋しさが感じられます。(牛後)
■和服の景でしょうね。ありのままを「なりました」と結ぶ可笑しさのなかに、「裸」の哀感。(篠)
万屋の店番になる風信子 学
○どんぐり○鈴木茂雄
■風信子がうまく溶け合っている。チュウリップではダメだと思う。(どんぐり)
■過日、「銀河系のとある酒場」で出会った「ヒヤシンス」が、きょうはなんと「万屋の店番」になっていた。だが、驚くには当たらない。こういうことはよくあることだ。酒場には「ヒヤシンス」が、万屋には「風信子」がじつによく似合う。そう思うだけでこの一句を読んだ価値はある。人が店番をするのは当たり前だが、花が店番をするというのだから驚く。この驚きが詩なのだ。(鈴木茂雄)
万歳は傘と箒や雪だるま 中塚健太
○真鍋修也○杉原祐之○金子敦○どんぐり○楚良○篠
■ある。ある。と言いたくなる風景。傘も箒も今でも家庭にある。しかし、目や口として使った豆炭はないだろう。近所の子供たちは、今は何を使っているのだろう。(真鍋修也)
■写生が効いています。素材を冷徹に見つめています。(杉原祐之)
■どちらかに統一してあげればよかったのに(笑)(金子敦)
■雪掻きお連れ様の万歳に。(どんぐり)
■いや確かに万歳をしています。(楚良)
■雪だるまの両手を「万歳」と言ったところが楽しい。(篠)
万力に締めらるる棒冴返る めろ
万障を繰り合はせたる朝寝かな 太田うさぎ
○鈴木茂雄○和人○恵○俊子
■こういう作品に解説は不要だ。「万障を繰り合わせ」てどこへ行くかと思ったら・・・。どんでん返しに意味を探るのは詩の仕事ではない。コトバと遊んでいるから「朝寝」のようなものでも詩になるのである。(鈴木茂雄)
■この季語にあっていない大げさ感が好きだなぁ(和人)
■朝寝が最優先されているのが羨ましくも可笑しい。できれば年中そうだったらいい(恵)
■リアルな一句です。(俊子)
万太郎の文字ころころと草団子 笠井亞子
○杉原祐之○瀬戸正洋○栗山心
■「ころころ草団子」が上手い。ほんわかとします。(杉原祐之)
■万太郎の文字はころころしている。草団子もころころしている。万太郎の好物なのだろうか。(瀬戸正洋)
■意外性に惹かれました。草団子も文字を連想させて良いと思いました。(栗山心)
万端の端から落ちる薮椿 沖らくだ
○鈴木茂雄○痾窮
■この作品も解説は不要だろう。「万端の端」ってなんだろう、と詮索してはならない。およそ詩的とは言い難いコトバ、用意万端の「万端」。その「端」から落ちるから詩的なのである。この「藪椿」が動くか動かないか、これを詮索するのは無粋というもの。落ちるのは藪椿であると、作者が断定したのだ。詩は断定にあり。(鈴木茂雄)
■何事にせよ完璧などはない、強固に見えた中東の独裁政権も次々とポックリ死。(痾窮)
万灯をもつて春夜の婿迎へ 藤幹子
○太田うさぎ
■ノスタルジックかつ幻想的。(太田うさぎ)
万物が水であるなら春の水 牛後
○義知○沖らくだ○たゞよし○正則
■雪解けの水の迸る様子。生命を感じました。(義知)
■明るくてあったかくてめでたい感じが好き。(沖らくだ)
■命が生まれて来る予兆を持ち合わせた温かい春の水。「あるなら」という強い見做しに惹かれた。(たゞよし)
■水はすべての源か(正則)
万力に挟まれてゐる春愁 米男
○金子敦
■そこはかとないペーソスに、心惹かれます。(金子敦)
万札を八つ折りにして蜆汁 山﨑百花
○杉原祐之○野口裕○藤幹子○山田耕司
■飲み会の精算を済ませたのでしょうか、丁寧に札を折畳み「蜆汁」を啜る。ちゃんとした場に慣れている感じがします。(杉原祐之)
■蜆汁だけの食事をさっさと済ませて、急用に向かうところでしょうか。小さな殻に身がどっさり付いていることでしょう。(野口裕)
■息子の嫁さんにでも渡すんでしょうかね。八折りがリアル。(藤幹子)
■誰かに握らすのか万札。蜆汁に「オトナの都合」が溶けている。(山田耕司)
万力を締めたり鳥は雲に入る 鴇田智哉
○中村 遥
■理由はないのですが、何故か直観的に鳥の首と万力がだぶって眼前に見えてしまって…。 徐々に徐々に恐さが漂う句。(中村 遥)
恋猫の声や萬屋錦之介 和人
○廣島屋
■確かにあの人は妙に高音で色気があります。(廣島屋)
露しとど万量生産・万両消費日の翌朝 埋図
朧月亀屋万年堂に入る 瀬戸正洋
○苑を○和人○一雄○めろ
■これは本店ですね。固有名詞の「亀」「万年」を生かして、店を知らなくても雰囲気あります。(苑を)
■私も朧月もたまには亀屋万年堂に入るのでしょう(和人)
■お菓子が懐かしと言うより、亀屋萬年堂という名前が懐かしいです。俳句に使える名前です。(一雄)
■湿り具合と亀屋万年堂さんの入口がほどよい距離です(めろ)
涅槃会のインクの漏るる万年筆 一雄
○山田耕司
■何かの「終り」を終りにしきれない風情。「漏」が効いている。(山田耕司)
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篠さん、。皆様、お疲れさまです。
返信削除露払いで、コメント、行かせていただきます。
選外で気になっていた句について、ひとことずつ。
●パチンコの玉一万個花の雲
昔なら(今でも?)25,000~40,000円かあ、と。銀色と桜はよく合いますね。
●万太郎の文字ころころと草団子
草団子とよく合します。でも、あの字、ころころかなあ、と。色紙
この一月、吟行で伺った根岸の「羽二重団子』さんで拝見した短冊に、私はころころ感を感じましたです。あ、画像の貼付け方がわからない・・・・
返信削除>根岸の「羽二重団子』さんで拝見した短冊
返信削除これですかね? べつものかも。
http://blog.livedoor.jp/yonosama/archives/51018524.html
おぉ、これです。ころころしてますでしょ? って草団子がまんますぎ・・・
返信削除選句の取りまとめ、お疲れ様です。
返信削除今回の兼題のうち「万」は最初「萬」で考えていたので、無意識のうちに「恋猫」の句をいただていました。実名を使った句としても面白いと思いました。試しに他の句の「万」を「萬」にしてみたら、違和感のあるものと気にならないものがありました。それもまた面白いですね。