2011年3月12日土曜日

●週刊俳句・第202号を読む 樋口由紀子

週刊俳句・第202号を読む

樋口由紀子

日曜日のびわこ毎日マラソンでは新鋭の堀端宏行が日本人トップでタイムもクリアして世界選手権の出場権を得た。先月の東京マラソンでも無印の川内優輝が日本人トップになり、話題になった。知らない選手の活躍を見るのは心が新しくなり、うきうきする。

週刊俳句を読む楽しみの一つに今回はどんな俳人にお目にかかれるのだろうかというのがある。週刊俳句がなかったら読むチャンスがなかっただろう俳句が読めるのはありがたい。川柳のジャンルにいるので、あたりまえだが、ほんの一部の俳人しか知らない、なんと知らない俳人の多いことか。それにしても編集部はいろんな人をよく見つけてくる。

第202号の淡海うたひもはじめての人。

  雛人形美人とことん得なりけり

我が家も女の孫が二人いるので雛人形を飾っている。あらためてじっと見てみると、こころなしかお雛様は三人官女より美人に見える。それだから、最上段のお内裏さまに横にすまして座っていられるのだろう。「とことん」は最後の最後、徹底的にという強い意味で、得とか損とかははしたないからあまり言わない方がいいのだけれど言ってしまいたいのが人の世の常。それに世の中の女性の95%以上は得していないのだから、ちょっとぼやいてみたくなる。けれども、この「とことんとく」は意味とは関係なくやわらかく軽やかに響く。これこそが言葉の役得だと思う。

週刊俳句の202号も驚きだが、週刊時評が26回というのも感心する。神野紗希の時評で教えられることは多い。今号も旬の言葉である「なう」に焦点を当てた着眼はさすがである。しかし、

  焼そばのソースが濃くて花火なう   越智友亮

この俳句のよさがわからない。現状をありのまま書き、現状をありのまま受け入れる。気負いがなく、親しみやすくわかいやすいのは確かだが、ひっかかってくるものがない。川柳を始めた頃、ベテランの川柳人に今どきの人の作る句はわからない、ついていけないと言われたことがあるが、私もだんだんとついていけない人の方になってしまっているのかもしれない。しかし、それは「なう」という語に対する嫌悪感からではない。
「なう」という一語を入れることで、「今、ここ」の花火大会のリアル感に加えて、「花火なう」のtweetが拡散していった先の、たくさんの人の「今、ここ」が現れる。
神野紗希が書くようなところまで私の頭も足も辿り着けないのだ。

サラリーマン川柳にも「なう」の句はあるのではないかと調べたら、第二十四回の優秀100句にやっぱりあった。サラリーマン川柳にはいち早く旬の言葉を盛り込んだものが多くある。

  部下からの 遅刻のメール 渋滞なう     コバヤ氏

参考までに。

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