2011年5月27日金曜日

●金曜日の川柳 樋口由紀子


樋口由紀子
  







君見たまへ菠薐草が伸びてゐる


麻生路郎 (あそう・じろう) 1888~1965


新緑の季節である。緑の季節に緑のものを食べると身体にいいらしい。菠薐草も緑のにおいがつんとして、食べるとポパイではないが力をもらった気になる。しかし、この句は食材として見ているのだろうか。ふつうは菠薐草をこのようには詠まないと思う。目の付け所に川柳人を感じる。「見たまへ」と言われた君はどう返事したのか。「きれい」それとも「おいしそう」。どちらにせよ返答に困ったはずである。麻生路郎は「川柳雑誌」(後の「川柳塔」)の創刊者で、「川柳とは人の肺腑を衝く十七音字中心の人間陶治の詩である」と主張した。『旅人』(川柳雑誌社・1953年刊)所収。

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