樋口由紀子
それはもう心音のないアルタイル清水かおり (しみず・かおり) 1960年~
川柳は前句付けから始まった文芸である。この句も前句があってそれに対する附句のようである。あるいは今の心の状態を問われての瞬間的な返答かもしれない。アルタイルは七夕星の牽牛星で、彦星であり、いままでは元気な鼓動の音を響かせて、彼女の希望の星であった。しかし、そのアルタイルはいくら耳を澄ましても心音が聞こえなくなってしまった。過去を振りかえりながら冷静に答えている。彼女にはどうすることもできない、どうにもならない心情を見つめている。川柳は嘆きやさびしさをこのように表現できる。「井泉」(No39 2011.5)収録。
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