2011年6月18日土曜日

●父



父の座に父居るごとく雑煮椀  角川春樹

父病めば空に薄氷あるごとし  大木あまり

押し花や熊楠もまた父たらむ  橋本 薫

父よ父よとうすばかげろふ来て激つ  中村苑子

遠泳や父を遥かにはるかにす  行方克己

悲壮なる父の為にもその日あり  相生垣瓜人

父も父の万年筆もとっくになし  池田澄子

夏座敷父はともだちがいない  こしのゆみこ

海鳴やこの夕焼に父捨てむ  奥坂まや

蓑虫の父となくべき父もなく  会津八一

手が見えて父が落葉の山歩く  飯田龍太

雪女郎おそろし父の恋恐ろし  中村草田男

冬の山父よ父よと錠を鎖し  柿本多映

雪野へと続く個室に父は臥す  櫂未知子

臨終なる父の口から波の音  仁平 勝

1 件のコメント: