相子智恵
白南風や地図の四隅に四人の手 興梠 隆句集『背番号』(2011年7月7日/角川書店)より。
梅雨が明けて白い輝きを感じる南風。その風の中で、地図を四隅から覗き込む四人の手だけが描かれている。
この四人、大人ではなく少年や少女の感じがある。「スタンド・バイ・ミー」のように。
それは〈四隅〉という描写の律儀さによる。それぞれが隅を持って囲み、四隅から指をさす地図は、少年期特有の友情の証のような、ともに冒険をするための特別な地図であるような気がしてくる。もしかしたら、自分たちで描いた秘密基地や宝の地図かもしれない。
そして、地図の四隅にあった四人の手はやがて離れ、「さようなら」と振るための手になることを予感させる。
そう、この句は未来の地点から過去の夏休みを回想しているように読めるのである。〈四隅〉の一語により、四隅が一度に見える俯瞰からのアングルが読者に与えられるからで、それが回想の風景を思わせるのだ。そして〈白南風〉という季語と〈手〉に絞った描写で、物語がふくらんでゆく。
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