相子智恵
弁当がぱつと明るい墓参かな 佐山哲郎
句集『娑婆娑婆』(2011年7月/西田書店)より。
お盆である。
先祖、親しい友人…墓の主は誰でもよいが、この〈墓参〉からは故人への親しみを感じる。
灰色や黒ばかりの墓石に手を合わせた後の、弁当の色とりどりの明るさ。小さな墓地なら、その場で弁当を広げて食べているのかもしれない。お盆に帰ってきた故人の霊も一緒に、その弁当を食べているかのような心理的な明るさがある。
〈
ピーと沸くたび新亡のただいまあ〉〈
羽根付きの餃子を添へて魂送〉
笛吹きケトルの湯気と一緒に〈ただいまあ〉と帰ってくる、新盆を迎えた精霊〈新亡〉たち。
パリパリと薄い(しかも旨い)餃子の〈羽根〉と一緒に送り返され、餃子と一緒に羽ばたいて帰る精霊。羽根付き餃子は故人の好物でもあったのだろう。
この作者のお盆の句はおしなべて明るく、ユーモラスである。つねに自分のすぐ近くに祖霊たちを感じているのだ。
そういう心の在り様は、死者ではなくむしろ私たち生者の心をなぐさめ、心に涼しい風を通してくれる。
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