2011年8月29日月曜日

●月曜日の一句〔中本真人〕 相子智恵


相子智恵








ばつた跳ねガードレールをかんと打つ  中本真人

句集『庭燎』(2011年8月/ふらんす堂)より。

ばったというとすぐに次の句が思い浮かぶ。
〈しづかなる力満ちゆき螇蚸とぶ 加藤楸邨〉

ばったがグッと力をためて飛ぶ一瞬を見事に捉えた句として名高い。ばったの飛ぶ力というのは本当に強くて、草むらでぶつかってくると、かなり痛い。

中本氏の句もまた、ばったの力強さをよく捉えている。〈かんと打つ〉この音は、ばったならではの力強い音だ。

そして何といってもこの句、飛んだばったがガードレールにぶつかるという景が、身も蓋もなくリアルである。草深い道で、ガードレールの白さが緑に映える風景というのも現代のものだ。

楸邨の凝縮された写生による、ばったの力が読者に乗り移るかのようなリアリティから、中本氏のあっけらかんと身も蓋もない、だからこそリアルな現代の写生へ。ばったの力強さを捉えたリアリティの違いが面白い。


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