相子智恵秋冷のオルゴールには金の針 天野小石
句集『花源』(2011.6/角川書店)より。
ずいぶんと残暑が長引いているので、掲句のような涼しさ・冷やかさがうれしい。
〈オルゴール〉というとまずは音が連想され、句にも音の方を描きたくなるところだ。しかし掲句はオルゴールの円筒をはじく金属の針、その金色を描写した。耳ではなく目で捉えたオルゴール。それであるのに、直接に音を描くよりも美しい音色が聴こえてくるように感じるから不思議である。
〈金の針〉というピンと張り詰めた美しさ。そこから連想される金属音が、頭の中に冷やかに澄んだ音を鳴らす。〈秋冷〉という季語が〈金の針〉と響いているからこそ、この澄んだ感じが出ているのだろう。〈秋冷のオルゴールには〉と、切れずに続く流れるような調べも音楽を感じさせる。またその金色から、秋風を表す「金の風」という言葉も浮かんできた。
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