樋口由紀子
なんぼでもあるぞと滝の水は落ち前田伍健 (まえだ・ごけん) 1889~1960
滝を詠んだ有名な俳句に後藤夜半の〈滝の上に水現れて落ちにけり〉がある。伍健の川柳と並べると俳句と川柳の違いの一端が見えるように思う。夜半の俳句は作者の顔は見えないが、伍健の川柳には作者がぬうっと顔を出している。
どちらも実際に滝を見ての写生句だろう。夜半はあくまでも滝を見ている人であり、滝そのものを詠んでいる。それに比べて伍健は滝に成り代わって詠んでいるのだが、つまりは滝を自分に引っ張り込んでいるのだ。滝を見て、なんぼでもあるぞと言いながら落ちているように、作者が思ったのだ。滝は「なんぼでもあるぞ」なんて考えもしないはずである。「なんぼでもあるぞ」という言い回しのおかしみと生き生きさが川柳の味を引き出している。
前田伍健は野球拳の創始者としても有名である。多才で粋人であったらしく、漫文で活躍し、句に自作の絵を添えたものが数多く残っている。
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この前は、引用した川柳の訂正をありがとうございました。このたびは、そのお返しというわけでもありませんが、
返信削除滝の上に水現れて落ちにけり
が、正確な引用になります。
野口さん
返信削除訂正をありがとうございます。
滝の上に水現れて落ちにけり
です。
すいませんでした。
申し訳ありませんでした。
返信削除直しておきました。