樋口由紀子
紀元前二世紀ごろの咳もする木村半文銭 (きむら・はんもんせん) 1889~1953
今秋は寒暖の差が激しく、急に冷え込むことが多い。すると風邪をひきやすく、喉も痛くなり、咳が出る。身体が異物に反応して、防御する。「紀元前二世紀ごろの咳」とはなんとスケールが大きく、言葉が豊かに使われているのだろうか。「ごろ」と「も」も絶妙である。その咳を通して、遥か昔に繋がっている自分の存在を確かめているようである。
「紀元前二世紀」に意味を持たせようとはしていないと思う。私が今ここに生きて動いていることを実感し、人というものの存在、その不思議さを詠んでいる。
木村半文銭は新興川柳運動に尽力した。〈夕焼の中の屠牛場牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛〉(昭和11年)〈亀の子のしっぽよ二千六百年〉(昭和12年)。
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