角川俳句賞受賞作品一読
野口 裕
久しぶりに角川「俳句」を購入した。昨日、大阪に所用があり、その帰りの電車でうつらうつらしながらの読書だったのであまり読めてはいないのだが、とりあえず角川俳句賞の「ふくしま」(永瀬十悟)を読んでみた。賞は、かなり偶然が左右する世界だと思っているせいか、それほど違和感がなかった。おもしろいと思った句
蜃気楼原発へ行く列に礼 永瀬十悟
ちょっと前に見た「ブリーチ」だったか「ナルト」(愚息の要望に応えて見に行ったが、もともとそういう世界に疎いのでごっちゃになっている)に、死者の群れがシャボン玉のように消えていくラストシーンがあった。後日読んだ、「ゲド戦記」最終巻に似たシーンがあったので、その援用だろう。その映像を思い出した。同じ趣向の、
陽炎の中より野馬追ひの百騎 同
の方が出来上がり具合はすっきりしているが、やはり句の迫力は蜃気楼の方が上回っている。この句、蜃気楼が夢幻世界のような現実世界のような不思議な雰囲気を醸し出している。「礼」が私の趣味には合わないが、それはそれとして、句にいちゃもんを付けるほどのことではない。
ここまで書いてきて、この感想は原発事故のあるなしに関係なく成り立つなあと気づいた。俳句とはそういうものなのかも知れない。
0 件のコメント:
コメントを投稿