樋口由紀子
わたくしがすっぽり入るゴミ袋新家完司 (しんけ・かんじ) 1942~
近頃のゴミ袋は大きくなった。人間一人ぐらいはやすやす入りそうである。人間もゴミもたいした違いはないのかもしれない。私も用が済めば、ゴミのようにこの世から消えていく。
川柳は発見と認識の文芸でもある。平易に平明に書かれているが、人の存在そのものを問うているように思う。自分も含めて人とはなにものなのだろうかと考えさせられる。
新家完司は一貫して現実を詠む。彼は現実のくだらなさやつまらなさを知っている。だからこそ、現実を見つめて、人の豊かさを探し求めている。〈横丁を曲がれば住所不定なり〉〈岬から先はあの世でいつも明るい〉『平成十年』(私家版 1998年刊)
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