相子智恵命名の半紙さゆらぐ雪あかり 杉山久子
『俳句』3月号「命名」(2012.2.25/角川学芸出版)より。
〈雪あかり〉のほの明るさに、生まれたばかりの子どもの〈命名の半紙〉がふわっと揺れている。なんと穏やかで、無垢な景だろう。
白色には冷たい白色とあたたかい白色がある。雪が照らす自然なほの白さと、人の手を感じさせる和紙の白さは、そのどちらもあたたかい白色だ。
そしてこの句は、色とともに響きもあたたかさを生んでいる。〈さゆらぐ〉と〈半紙〉のかそけきS音、〈さゆらぐ〉と〈雪〉の穏やかな「ゆ」の音。その流れるようなつながり……。
あたたかな白と、穏やかな響き。実景を描いた句でありながら、それらが象徴する色と音は、無垢な新しい生命の誕生の言祝ぎに、たしかにつながっている。
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