相子智恵
料峭や玩具のやうな犬が過ぎ 櫂 未知子
『俳壇』4月号「玩具」(2012.4.1/本阿弥書店)より。
明日は彼岸。「暑さ寒さも彼岸まで」というが、今年の春はなかなか暖かさが感じられない。晴れた日でも春風の寒さを指す〈料峭〉という季語が、ぴたりとくる日が多い。
さて掲句。〈玩具のやうな犬〉って、たしかにいるいる、と思う。トイプードルのような小型の飼い犬だろう。「トイ」という語がまさに「玩具」なのだが。
きっとこの犬は、飼い主に洋服を着せられていたり、ぬいぐるみみたいな感覚で可愛がられているのだろう。ペットのための洋服や誕生日ケーキ、乳母車のようなバギーなど、最近は犬のためのグッズも華やかだ。
そんなおもちゃみたいな犬が、散歩だろうか、ちょこまかと通り過ぎていった。そこに、冷たい春風が吹く。なんだか脱力する風景だが、そこに作者の冷ややかな眼差し、批評性が感じられてくる。
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