2012年3月23日金曜日

●金曜日の川柳〔松江梅里〕 樋口由紀子


樋口由紀子








命まで賭けた女てこれかいな


松江梅里

「これかいな」とふと口から出たつぶやきが川柳で生きる。生きるや死ぬといって大騒ぎした相手が「これかいな」とは、思わず笑ってしまう。「これかいな」しか言ってないのに、なにもかもわかり、言い尽くしている。みんなが納得するような美人でも聡明な人でもなかったのだ。人の好みはさまざまである。だから、世の中はおもしろく、うまくまわっていく。

下五へのつなぎとしての「て」が絶妙に効いて、リズムもテンポもよくなる。「て」で感情をうまく描写した。「の」「は」「が」ではそうはいかない。そして、表面にぐいぐいと大阪弁が押し出される。川柳は関東に比べて関西の方が元気なのは大阪弁効果のせいかもしれない。ほんまの大阪弁を話す人がこの句を披講すれば、その味は倍増するだろう。なんともいえぬおかしみを醸し出している。


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