樋口由紀子
草上の食事 なくしたものばかり窪田久美 (くぼた・くみ) 1929~
「なくしたものばかり」というのはよく聞くフレーズで、よくある感慨でもある。しかし、「草上の食事」とは意外な組み合わせである。マネの「草上の食卓」を鑑賞してのことかもしれない。
子どもの頃の恒例の行事を思い出した。れんげ草は良い窒素肥料になるらしく、当時田植えを行なう前の水田に一面咲いていた。れんげ草をすきこむ前の日曜日に村の子ども全員で、かけっこ、なわとび、普段入ることができないれんげ畑で思い切り遊ぶのだ。それは本当に楽しかった。そして、なにより一番の目当てはれんげ草の上に茣蓙を敷いて食べるお弁当であった。
私の子ども頃はまだまだのんびりとして、のびのびとした時代であった。ときどき無性になつかしくなる。あの頃からなくしたものは確かにあまりにも多い。
窪田久美は「ふあうすと」で時実新子の好敵手であった。河野春三の「風」でも活躍していたが、のちに俳句に転向し、「青玄」の編集人を務めた。『風』(1977年)収録。
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