2012年6月1日金曜日

●金曜日の川柳〔山河舞句〕 樋口由紀子


樋口由紀子








怒怒怒怒怒 怒怒怒怒怒怒怒 怒怒と海


山河舞句 (やまかわ・まいく) 1940~

第二回高田寄生木賞大賞受賞作品。実際の句は中七の「怒怒怒怒怒怒怒」は上下反対になっている。山河は仙台市在住。特選に推した渡辺隆夫は「三・一一を一句で表現すればこうなる。それにしても津波の音を『怒』で表現できるとは思ってもみなかった」と選評した。

衝撃と動揺をこのように表現したことに感心する。津波、原発、無策、あらゆる事態を生んだすべてのものに対しての山河のやり場のない強い怒りと決して忘れないと言う決意がこの句にみなぎっている。「怒怒怒怒怒~~~」の視覚効果、音声的にも「どどどどど~~~」と迫ってくる。中七の「怒」を反転させることでより強力度も増した。しかし、どれだけ「怒」を重ねても、「怒」を逆さにしてもどうすることもできないジレンマも同時に感じる。「怒怒と海」はつらい。「触光」(22号 2011年6月)収録。

1 件のコメント:

  1. 飯島章友2012/06/01 21:37

    はじめての書き込みドキドキ。。。

    樋口由紀子さま
    この句、わたくしも注目しました。
    「怒」の形象に着眼し、その文字だけであの事態のさまざまを包含した手柄は素晴らしいと思います。
    ただ新興川柳運動の時代に類似した手法はあります。短歌にもありますね。なので少なくともわたくしにはそれほど驚きはありませんでした。
    また空前の事態にこういう手法でのぞんだ意気は素晴らしいのですが、何ともいえないモヤモヤ感は否定できません。
    誤解なきよう言いますと、作者のかたや掲出句に向けてというよりは、選者のかたがたの選に対する感想です。
    これを誰かに話したい、話したい、と思っていたので、この句のご紹介は渡りに船でした。

    山河舞句さま、このたびはおめでとうございます。また句をご紹介くださった樋口由紀子さま、ありがとうございます。

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