相子智恵
きりころと聞けばころきり雨蛙 茨木和生
句集『往馬』(2012.5/俳句四季文庫19)より。
2001年に出版された句集だが、新たに文庫版で刊行された。入手困難となっている句集がこうして改めて読めるのはありがたい。
掲句〈きりころ〉〈ころきり〉という、雨蛙の鳴き声のオノマトペがなんとも楽しい。小さな雨蛙は、蟇などの大きな蛙よりも声が高い。一匹だけを聞くと「ギョッギョッギョッ」とも聞こえる鳴き声だが、この時期、たくさんの雨蛙が、まさに“かえるの合唱”状態になると、遠くの鳴き声と近くの鳴き声とが重なりあって音階に幅が出る。
〈きりころ〉〈ころきり〉は、一匹の蛙が鳴く軽快な高い声のようでもあるし、こうした大合唱の全体を捉えたようでもある。
先週末に関東も梅雨入りした。鬱陶しさもあるが、掲句のように、いま楽しめる音を楽しみたいと思う。
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