【俳誌拝読】
『雷魚』91号(2012年7月1日)を読む
西原天気
発行人・小宅容義。B5判・本文40頁。同人2名の特別作品(各20句)、同人諸氏各10句が並ぶ。以下、気ままに。
じふぶんな太さの上の葱坊主 勝又民樹
啄木忌五円切手を貼りました 関戸美智子
けふ二月二十九日ぞ馬鹿をせむ 松下道臣
天変地異さざえのふたのうらおもて 三橋孝子
如月の封書の中の片寄れる 宮路久子
恋果つる猫にうやうやしき睫毛 茂田慶花
町じゅうの桜が見えて桜山 森 章
水槽をあふれて春の水となる 山中理恵
花散ってしまった伊豆の亀レース 遊佐光子
うぐいすや鏡はものを近くする 好井由江
櫻さんぐわつ蒲鉾の噛み應へ 太田うさぎ
死角に海死角に都忘れかな 大塚阿澄
村の香の人の香となり鶏合 岡本高明
蝶だとは判らぬほどの遠さかな 小宅容義
あき缶の爛れておりぬ野焼きかな 神山 宏
をとこ三人白玉食うて別れけり 亀田虎童子
連翹の迂闊に息を合わせたり 北上正枝
永き日や渡りし橋を振り返り 小島良子
電線に数万ボルト囀れり 小林幹彦
うすらいにすり傷ほどの風のあと 櫻井ゆか
波音の祭り囃子に乗っ込みぬ 鈴木夏子
蛇を入れ一本の木の静かなり 蘓原三代
紫蘇の実を箸でしごくみ七年忌 竹内弘子
涅槃図を見終つて靴篦使ふ 寺澤一雄
黒傘をにほひすみれの土に突く 遠山陽子
陽炎ひてキリンの顔は空にあり 平佐悦子
行く春の空席ひとつまたひとつ 細根 栞
凡そ世界に不眠の吾と秋の蠅 増田陽一
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