2012年7月3日火曜日

【俳誌拝読】『雷魚』91号を読む 西原天気

【俳誌拝読】
『雷魚』91号(2012年7月1日)を読む

西原天気


発行人・小宅容義。B5判・本文40頁。同人2名の特別作品(各20句)、同人諸氏各10句が並ぶ。以下、気ままに。

じふぶんな太さの上の葱坊主  勝又民樹

啄木忌五円切手を貼りました  関戸美智子

けふ二月二十九日ぞ馬鹿をせむ  松下道臣

天変地異さざえのふたのうらおもて  三橋孝子

如月の封書の中の片寄れる  宮路久子

恋果つる猫にうやうやしき睫毛  茂田慶花

町じゅうの桜が見えて桜山  森 章

水槽をあふれて春の水となる  山中理恵

花散ってしまった伊豆の亀レース  遊佐光子

うぐいすや鏡はものを近くする  好井由江

櫻さんぐわつ蒲鉾の噛み應へ  太田うさぎ

死角に海死角に都忘れかな  大塚阿澄

村の香の人の香となり鶏合  岡本高明

蝶だとは判らぬほどの遠さかな  小宅容義

あき缶の爛れておりぬ野焼きかな  神山 宏

をとこ三人白玉食うて別れけり  亀田虎童子

連翹の迂闊に息を合わせたり  北上正枝

永き日や渡りし橋を振り返り  小島良子

電線に数万ボルト囀れり  小林幹彦

うすらいにすり傷ほどの風のあと  櫻井ゆか

波音の祭り囃子に乗っ込みぬ  鈴木夏子

蛇を入れ一本の木の静かなり  蘓原三代

紫蘇の実を箸でしごくみ七年忌  竹内弘子

涅槃図を見終つて靴篦使ふ  寺澤一雄

黒傘をにほひすみれの土に突く  遠山陽子

陽炎ひてキリンの顔は空にあり  平佐悦子

行く春の空席ひとつまたひとつ  細根 栞

凡そ世界に不眠の吾と秋の蠅  増田陽一

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