樋口由紀子
恋人と陶器売場で見る夕日畑美樹 (はた・みき) 1962~
川柳の高齢化がますます進んでいる。句会、大会で若い人を見かけることがほんとに少なくなった。したがって、自動的に青春川柳もお目にかかれない。
夕日を見るためにわざわざ山に登ったり、絶好のスポットに行ったりすることがある。しかし、掲句は夕日を見るために陶器売場に行ったのではないだろう。偶然目にしたのだ。恋人と新生活に必要な茶碗やコップを買い求めているときに、思いがけなく、夕日が差してきた。どちらともなく気づいて、二人で夕日をながめた。
日常のひとこまを切り取っているが、恋人と陶器売場と夕日と絶妙のコラボレーションである。この夕日は何を象徴しているのか。これから先は明るい未来だけではないが、今の二人を照らしてくれていることは確かである。セレクション柳人『畑美樹集』(2005年12月刊 邑書林)所収。
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