『里』2012年2月号
西原天気
え? 2月号?と訝らないでいただきたい。少し前に届いたのだ。そう、冬とか春に届いたんじゃない。と、発行日を確かめると、「2月9日」とある。えぇ~? そんなはずはない! アタマがこんがらがって、TVドラマシリーズ『ミステリーゾーン』(原題 Twilight Zone)を観ているような気になる。ともかく、いろいろな事情があって、現在、月刊同人誌『里』は、30日と置かずに次々と絶賛発行中だそうだ。
発行人:島田牙城、編集人:仲寒蟬。この号はA5判、本文44ページ。小誌「週刊俳句」では、この『里』の連載から2本(小林苑を「空蝉の部屋」、上田信治「成分表」)を転載、また、第278号では、 島田牙城・「「俳句」2012年8月号「緊急座談会」読後緊急報告「輸入品の二十四節気とはずれがある」は間違ひだ!」を転載させていただいている。
巻頭に、九里順子「眼が狩る、眼を狩る 齋藤玄論」。齋藤玄(1874~1980)は、いまは読まれる機会が比較的少ない作家かもしれない。当記事は、「眼」等、モチーフという括りで整理され、ひとりの作家をコンパクトに伝える。
鳥の目と鳥撃ちの眼と氷りゆく (昭四六・『玄』)なお、齋藤玄についてはウェブサイト「詩客」で飯田冬眞氏の連載が継続中(≫こちら)。
狩られる「鳥」と狩る「鳥撃ち」は、「目」と「眼」が呼応して、自然の中で共に氷る。これは、見る者が見られる者の目になり、世界を捉える玄の方法を象徴している。
同人諸氏の俳句作品は7句ずつ、2段組に並ぶ。
巻末近くの島田牙城「御中虫の一句が示すこと」は、『豈』第53号に載った一句、
月といふのですか、巨きな石ですね。 御中虫
を取り上げ、《「月」の持つ伝統も情趣もすべてを吹き飛ばしてしまひながら、「月」そのものの質感をこちらにぶつけてくる》(原文の旧漢字を新漢字で表記)と好評。
月=大きな石、という把握は、最近どこかで見たと思ったが、句集『娑婆娑婆』(2011年7月/西田書店)だった。
人は塵月は巨大な石である 佐山哲郎
こう並べてみると、前掲の御中虫さんの句は、口語体・非定型(韻律的には6・7・5の定型感が強い)という外観がユニーク。「~といふのですか」という導入の調子もいい。佐山哲郎さんの句は、「人は塵」というあたりが余計かもしれません。短歌的過剰というか。まあ、このあたりは好みによる。
うふふ。ありがとうございます。
返信削除「詩客」のご紹介、ありがとうございました。でも、「戦後俳句を読む」は8/30アップ分でしばしお休みです。
返信削除