相子智恵たたむとき翼めくなり秋日傘 片山由美子
句集『香雨』(2012.7 ふらんす堂)より。
日傘を畳むときに、鳥が翼を休めたように感じたのだろう。白い日傘なら白鷺のように、黒日傘なら鵜のように大きな鳥が、翼をすーっと閉じてゆく瞬間のイメージが、私の脳裏には浮かんできた。
逆に日傘を開くときにもまた、バサリと飛び立つ鳥の翼を感じることができただろう。しかし、作者は日傘を〈たたむとき〉を選んだ。
この日傘は、暑さ本番の夏の日傘ではなく、残暑まで差している〈秋日傘〉である。あと半月ほど経って、もう少し涼しくなれば、この日傘も今年の役目を終えるだろう。その〈秋日傘〉の季語の気分は、翼を畳んで休もうとする瞬間の鳥たちの安堵にも似ている。やはり、〈たたむとき〉なのだ。
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