2012年10月9日火曜日

【俳誌拝読】『里』2012年6月号を読む 西原天気

【俳誌拝読】
『里』2012年6月号を読む

西原天気



発行人:島田牙城、編集人:仲寒蟬。A5判、本文36ページ。以下、同人諸氏の作品から気ままに。

饐飯や隣の屋根にいなびかり  狼耳

足で掻く足の裏側明易し  秋山菜穂

つちのこは本当にいる梅雨に入る  洋子

花衣屍のごと重なりぬ  仲 寒蟬

さばへなす神ぞ長湯に居眠るは  島田牙城

ベランダより落ちてブラウス靴その他  谷口智行

無花果の葉のごわごわの母を嗅ぐ  男波弘志

茄子の花ふつうに育ちふつうに嫁ぐ  木綿

半分は自分羊羹切るときも  湾 夕彦

サイダーの泡の向うを影過ぎる  ひらのこぼ

蝌蚪の水生活感のありにけり  きびのもも

六月のととのつてゐる木のかたち  水内和子

しあわせに直径ありぬしゃぼん玉  月野ぽぽな

月夜かな広場におばあさん踊る  小林苑を

日めくりをめくりたそうな冷奴  倉田有希

押す釦押せばカチリといふ薄暑  上田信治

秋の川棒をつかつて渡りけり  佐藤文香

 ●

上田信治「成分表77」は、差異化と価値について。

際限のない差異化のループ(違うから惹かれ、それに慣れる=飽きると、別の差異化を求める)から脱して、パスコの「超熟」を毎朝のトーストにすることとは?


そのうち週刊俳句に転載されるはずですから、そのときまたゆっくり考えてみればいいことですが、自分の言い方で言えば、「パンて、もともと美味しいものだから。美味しくなければ、こんなに長いこと食べてこなかったわけだから」ということでしょうか。「もともと美味しいもの」というのを忘れた人が差異化ゲームに走るのかもね、と。


ちなみに「超熟」って一度食べてみたのですが、私とは相性が悪かったんですよね。だからって、軽井沢からパンを取り寄せたり、フランス人ブーランジェの大きな写真を飾った店にわざわざ買いに行ったりは、絶対にしませんけれど。

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