樋口由紀子
少年は少年愛すマヨネーズ
倉本朝世 (くらもと・あさよ) 1958~
少女は女のにおいがするが、少年には男のにおいがしないと誰かが言っていた。「少年」という言葉には純粋性が漂う。「少年は少年愛す」のはあるだろう。しかも「愛す」だから、単に好きだというレベルではない。少年の存在そのものに向かっての意識が高まっていく。
が、なぜ「マヨネーズ」なのか。と、考えているうちにチューブからしぼり出る薄黄色のぬるっとした食感を思い出す。べっとりとして、艶々している。「少年は少年愛す」と「マヨネーズ」をぶつける二物衝撃ではなく、アナロジーだろう。二つ並ぶと好奇心とか嫌悪感を相殺して超えていく。二つが似ていると見た作者の知的直観が立ち上がった。
〈グラビアのからだちぎれる天の川〉〈童話のページ深くて桃は冷えており〉〈ふるさとは幾度も河へ倒れ込み〉『硝子を運ぶ』(詩遊社刊 1997年)所収。
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