樋口由紀子
回転鮨はこの世の果ての如くあり
海地大破 (うみじ・たいは) 1936~
世の中にはよくわからないものや不思議なものが数多くある。けれども、ふつうは回転鮨をこのようには思わない。作者は色とりどりの鮨が次々とベルトコンベアに乗って運ばれてくるのがこの世の果てに見えたのだろう。
いまでこそ回転鮨は見慣れたものになったが、登場したときは驚いた。現代の知恵と技術を駆使した合理的なものである。それを非合理なものとしてとらえている。すべてのモノやコトは合理的にとらえ切れるものではない。謎がある。「回転鮨は」の「は」で描写に粘着力が出た。
〈はらわたに仏が降りてきて眠る〉<転生のよさこい節を口ずさむ〉 思いや感情を骨格太く描けるのは自己の拘泥と覚悟があるからだろう。世界と向き合っている作者がいる。『現代川柳の精鋭たち』(北宋社刊 2000年)所収。
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