2012年10月30日火曜日

【俳誌拝読】『大』vol.23(2012年秋号』 西原天気

【俳誌拝読】
『大』vol.23(2012年秋号)

西原天気


編集・発行:境野大波。A5判、本文44ページ。

招待席5句より。

  風吹いて芭蕉の骨の鳴る日なり  梅津篤子

同人諸氏作品より。

  猿山の子猿の拾ふ秋のもの  境野大波

  長き夜の旗判定や白二本  青木空知

  雲の峰ざらつく紙に式次第  秋山 夢

  お参りはせぬ人と来て墓洗ふ  安達ほたる

  黒南風のまづ寄るソウル市場かな  荒井八雪

  風の道草の道なる通し鴨  安藤恭子

  ふきの葉の穴すけすけとなる芒種   石田遊起

  熊除けの鈴の聴こゆる緑雨かな  井関雅吉

  ゴーヤつてしみじみ強しうらやまし  市川七菜

  ベランダの芥の中に蛾が白し  榎本 亨

  下闇や竹の持ち手の虫めがね  遠藤千鶴羽

  数百の蝉の震へに目覚めけり  奥村直子

  コカコーラの瓶の流れてゆく夏野  尾崎じゅん木

  廃線の枕木ごとに夏果つる  尾野秋奈

  掬ひては水羊羹の滑り落つ  かたしま真美

  秋風や前三輌は海へ行き  川島 葵

  八月の一合だけの米を研ぐ  きたかさね

  夕立の音のあかるきアーケード  佐山薫子

  雨匂ふ葦簀の匂ふまひるかな  高畑 桂

  すこしづつ祭りの町となりゆける  武井伸子

  朝顔や留守のあひだに交配し  土岐光一

  夏の鳥金属片のごと飛べり  中村瑞枝

  影に入る晩夏のビルの影を出て  花房なお

  前菜のずらり赤くて半夏生  双葉

  お供物を頭で運ぶ素足かな  古瀬夏子

  青嵐渦にあぶくに流れたり  前田りう

  万緑の真中におはす女郎蜘蛛  八重樫闊歩

  花茣蓙の広げしものと巻かるると  山下きさ

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