2012年12月7日金曜日

●金曜日の川柳〔きゅういち〕 樋口由紀子



樋口由紀子







パサパサの忍び難きが炊きあがる

きゅういち 1959~

パサパサのお米が炊きあがるならわかる。が、それならば、わざわざ一句にしないだろう。しかし、ここでは「忍び難き」だ。「忍び難き」といえば、「堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍び・・・」の玉音放送(終戦の詔勅)を思い出す。そして、それは昭和の大きな事実である。

それに「パサパサ」をつけるなんて、なんということをするのだと感心した。悪意を感じる。作者は「忍び難き」にこだわっている。だから言葉を組み合すことによって探り出そうとする。言葉によって現われる空間、そこに昭和や戦争が表出し、現在が浮かび上がる。

〈皇国の野球を思う遠喇叭〉〈衛兵たち消えて蝋石ある夕空〉 「川柳カード」(創刊号 2012年刊)収録。

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