樋口由紀子
神さまに聞こえる声でごはんだよごはんだよ
山村 祐 (やまむらゆう) 1911~2007
私の住む村では夕方になると「○時です。早く家に帰りましょう」という有線放送がかかる。けれども、今は外で遊び回っている子どもをあまり見かけない。一昔前まで子どもは外で遊ぶものであった。ランドセルを玄関に放り投げて、日の暮れるまで遊んだ。すると、誰かの家の人が「ごはんだよ」子どもを呼ぶ。そして、それを合図にその日の遊びは終わり、それぞれ家に帰った。
そんな人間の地上での生活を天にいる神さまに聞こえるように伝える。それはなんのためなのかわからない。この世とこの世の外、二つの世界を意識させる。「ごはんだよごはんだよ」、不思議な川柳である。
山村祐は川柳評論誌「海図」を発行、短詩形詩誌「森林」を主宰。「川柳は現代詩として堪え得るか」「短詩ゴムマリ論」などの革新的川柳論を数多く発表した。
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