樋口由紀子
小銭入れチャックはち切れそうになり
清水白柳 (しみず・はくりゅう) 1905~1970
若い人はそうではないかもしれないが、思い当たる人は多いと思う。私も娘と買い物に行くといつも小銭を使わないと注意される。小銭が財布の中にあるでしょうと。もちろん知っている。けれども、レジの前で小銭を探すのに時間がかかるし、めんどうなのだ。だから、手っ取り早く紙幣を出して、おつりをもらう。このくりかえしで小銭入れは膨らむ一方になる。
人の暮らしを観察して見てみると結構おもしろいものに出合う。膝ポン川柳と言うのがある。膝をたたいて、そうそうとうなづく川柳のことである。どうってことない生活の一部分を切り取って、おかしみを誘う。掲句は稚気をおおらかに詠んでいる。
〈ジャンパーで来るは同窓のトップなり〉〈痩せがまん雲の行方を見ていたり〉〈あとつぎどころか文学をこころざし〉『清水白柳遺句集』
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