2013年3月10日日曜日

〔今週号の表紙〕 第307号 途切れた線路 橋本有史

今週号の表紙〕 
第307号 途切れた線路

橋本有史



3.11から2年が経過した。もうこの地に何回来ただろうか、20回くらい来ていると思う。ここは陸前高田の旧市街地のほぼ中央に位置する場所で、目の前に広がる景色の中で、そして背後に広がる景色の中で1800人近くの人が命を失った。

この場所に初めて来たのは震災から約4ヶ月後であった。その頃はまだ瓦礫の山、木造のものは全て流されて、コンクリートの建物はコンクリートだけのがらんどう、旧市役所は4階まで全て窓枠さえ残っていない。市民体育館の時計が3時半少し前で止まっていたことだけが記憶に新しい。

縁あって、陸前高田、気仙沼で社会奉仕活動を続けている。東北すくすくプロジェクト、被災地におけるお母さんと子どもたちへの支援である。大津波は防波堤、建物といった建造物のみならずそこの人々のコミュニティも破壊してしまった。お母さんと子ども、赤ちゃんの「支えあうコミュニティ作り」、これを使命としている。

寺田虎彦の「天災は忘れたころにやって来る」という言葉は有名だが、彼の文章を読むとこれにはより深い意味がある。忘れたころに来るから天災になる、これが真の意味だ。大津波も毎年来ていれば天災にはなり得ない。100年は地球物理学的には一瞬だが、人間社会では30年で世代が代ってしまう。この震災の記憶を永く後世に伝え、社会としての記憶を消さないことが重要だと思っている。



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