樋口由紀子
踊ってるのでないメリヤス脱いでるの
根岸川柳 (ねぎし・せんりゅう) 1888~1977
飄逸で思わず笑ってしまう。その姿を想像して、また笑ってしまう。この動作を真似てみたくなる。客観的な描写に力がある。
メリヤスとは毛糸や綿糸で編んだ伸縮性に富む布地のことで、ここでは紳士用の股引のことである。今のようにヒートテックのレギンスのようなカッコいい下着がなかった頃、中年以上の男性のほとんどは保温性のある股引を愛用していた。これが肌にぴたっとくっついて脱ぎにくい。片足から脱いでいくと、バランスを崩してこけそうになる。オットトと必死になって、手をあげて……。その恰好はまるで踊っているように見える。本人が必死であるだけに滑稽である。
〈茹でたらうまそうな赤ン坊だよ〉 根岸川柳は第十四世川柳の柳号を継いだ。川柳界では初代柄井川柳から綿々と川柳号が継承され、現在は第十五世脇屋川柳。
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