2013年3月29日金曜日

●金曜日の川柳〔金子勘九郎〕樋口由紀子



樋口由紀子







女あり人語を解し哀れなり

金子勘九郎 (かねこ・かんくろう) 1912~?

昭和13年頃の作。女性は今とは比べものにならないくらい低い地位におかれ、人権などは無きに等しかっただろう。その時代に勘九郎はこのように詠んだ。当時としては卓抜した女性観である。

「人語を解し」とは人として道理もわきまえ、理性も思念もあり、判断能力のある女性が、人間の尊厳などとはほど遠い、一人前の人として扱われていないという事実を理解しているという意味だろう。勘九郎はこの理不尽を怒って「哀れなり」と強く言い切った。勘九郎に会ってみたかった。

金子勘九郎は中村冨二と二人誌「土龍」を創刊し、当時の既存の川柳とは違う斬新な方向性を示した。「土龍」は現代川柳の一つの出発点である。『土龍』(1938年刊)収録。

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