2013年6月28日金曜日

●金曜日の川柳〔石原青竜刀〕樋口由紀子



樋口由紀子







神武以来食えぬ人あり放っとかれ

石原青竜刀 (いしはら・せいりゅうとう) 1898~1979

神武とは神武景気のことで、昭和29年に始まった高度経済成長期をさしている。神武天皇が即位した年以来の好景気ということで名づけられた。

掲句は昭和32年作。昭和31年に政府の経済白書に「もはや戦後ではない」と記された。それほどの好景気のときでも食べていかれない人は放っとかれている、そんな社会であると糾弾する。「放っとかれ」が現状を明瞭に実体化している。今の世相にも通じる。

石原青竜刀は「川柳非詩論」を唱え、抒情を排し抒事に徹し、批判精神を述べることを川柳に求めた。〈白足袋の眼に地下足袋は不逞なり〉、白足袋は当時の総理大臣であった吉田茂をさしている。〈オレは笑う粉屋が山をかけのぼる〉、粉屋は日清製粉をさしている。

3 件のコメント:

  1. >〈オレは笑う粉屋が山をかけのぼる〉、粉屋は日清製粉をさしている。

    これは、金子兜太の「粉屋が哭く山を駈けおりてきた俺に」のパロディですね。「石原青竜刀は、抒情を排し抒事に徹し」ということを鑑みると、祖父が日清製粉の創業者だった正田美智子(現皇后陛下)の御成婚にちなんで詠んだと思われますが、それだと御成婚は昭和34年だから、金子兜太の句は昭和35年初出なので、金子兜太が石原青竜刀の川柳をパロった!?、わけないなあ。ここまで照応していると。樋口さん、〈オレは笑う粉屋が山をかけのぼる〉の初出が何年かわかりますか。

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  2. 樋口由紀子2013/06/28 20:22

    猫髭さん

    いつも読んでくださってありがとうございます。初出が何年かはわかりませんが、「金子兜太氏におくる」と前書があるので、昭和35年以降でしょう。

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  3. やっぱし(笑)。でも、いいよね、金子兜太の句をぐだぐだ言ってる俳句世間の連中より(碩学の国文学者から精鋭若手までひっくるめた真面目腐ったボケ具合より)、この石原青竜刀の大人の遊びの方が粋で。

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