樋口由紀子
噓つきがいっぱい豆腐屋はこない
石橋芳山 (いしばし・ほうざん) 1954~
昔と変わったなあと思うことはよくある。豆腐屋もその一つ。私が子どもころは豆腐は売りにきていた。ラッパか鉦だったか、豆腐屋のその音が聞こえると、母は「豆腐屋さん」と急いで呼びとめて、入れ物を持って買いに走っていた。
今はいつでもスーパーなどで豆腐は手軽に買える。いろんな種類の豆腐を自由に選ぶことができる。便利になった。しかし、便利さを求めるあまりに、その一方で失くしたものがいっぱいある。「嘘つきがいっぱい」は疲弊した社会をさしているのだろう。人の心は簡単・便利・安価なものにどんどん売り渡たされ、これからもっと気持ち悪い世の中になっていていくような気がする。
〈温泉たまご学んだものが身にならぬ〉〈ポイントが溜まってお情けを貰う〉『月曜会』(2013年6月刊)収録。
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