樋口由紀子
シャボン玉ああ夕焼けが回ってる
福岡阿彌三 (ふくおか・あみぞう) 1908~1974
夕焼けが美しい。夕焼けの空に向かって誰かが飛ばしたシャボン玉がくるくる回っている。遥か彼方の夕焼けも、シャボン玉に映る夕焼けも、それらも回っているように見える。夕焼けとシャボン玉、それだけの世界、そこは時間が止まっていて、その世界は悠久の続いていくように感じる。
「ああ」は思わず声に出てしまう言葉。感嘆しているのか、驚いているのか、嘆いているのか。掲句は夕焼けというモノに感じて発したのだ。「ああ」としか言いようがなかったのだろう。「ああ」が浮かび上がって、回っているようである。
〈きのう空が見えなくて茂った葉だった〉 福岡阿彌三は西脇順三郎の詩論に影響を受け、現代詩としての川柳革新の推進に努めた。
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