2013年8月12日月曜日

●月曜日の一句〔九里順子〕相子智恵

 
相子智恵







炎昼に列柱絶対安全男  九里順子

句集『静物』(2013.7 邑書林)より。

暦の上では秋に入ったとたんに、酷暑の日々だ。秋の涼しい句を読もうかとも思ったが、こう暑いと脳が煮えて、掲句のようなパンクな句に惹かれる。

真夏の暑い昼下がり〈炎昼〉に、柱が並んでいる。それだけでも異様な光景だが、ダメ押しのように〈絶対安全男〉と来る。〈絶対安全男〉とは、なんだか笑えるフレーズだ。

思えば〈絶対安全〉といわれることほど、不安全なものはない。絶対安全と思い込んでいたものに事故が生じて一旦は目が覚めるのに、また、絶対安全を信じ込もうとする今みたいだ。

〈絶対安全男〉の薄っぺらい安全感(本質の反語的表現か、草食男への揶揄か)に、「エンチュウニレッチュウ」の語呂のよさが加わるのも楽しくて、妙に滑稽である。

これは果たして異様な光景(性的にシンボリックなものが暗に〈列柱〉に含まれた、草間彌生のオブジェ的世界)なのか、それともこの列柱は電信柱か何かで、日常の真夏の風景なのか……よくわからなくなって、もう笑うしかない。それは暑すぎて笑うしかないのに似ている。

日常とは、狂気に近い。

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