相子智恵
月光のチェロに体をあはせけり 山田露結
俳句通信『彼方からの手紙』vol.7(2013.9.19/山田露結・宮本佳世乃 刊)より。
チェロが月の光に照らされて、音の美しさとともに、そのフォルムと表面の艶の美しさを際立たせている。
チェロといえば音を詠むのかと思いきや、〈体をあはせけり〉という展開によって、この楽器の持つかたちや艶に気づかされるのだ。
チェロのフォルムは女性の体の曲線に似ている。〈体をあはせけり〉は奏者がチェロの音に合わせて体を揺らしているようにも読めるし、フォルムを思えば、チェロという楽器に身を添わせること自体が、とても官能的であるように思えてくるのである。
音とかたちと色、上品なエロティシズムのある、美しい月夜の句である。
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